CAMRは状況変化のアプローチ(西尾幸敏)2016年4月28日-2016年6月30日

2016年4月28日
西尾です。新しいシリーズです(^_^)
CAMRは状況変化のアプローチ!(その1)
 通常の医療モデルではまず第一に「原因を根本的に治癒する」という問題解決を図ると思います。しかしリハビリではそれが不可能なことも多いですよね。たとえば脳性運動障害や脊髄損傷では麻痺は治せないし、切断肢も元には戻りません。そこでリハビリでは「より良い状況への変化」が問題解決の基本モデルになります。(その2に続く)※毎週木曜日夜に投稿です(^^)


2016年5月5日
西尾です。いよいよ草刈りの季節が始まりました(^^;
CAMRは状況変化のアプローチ!( その2)
 CAMRはこの時この場でできることを探し出し、すぐに達成することを日々積み重ねることが目標です。患者さんは日々できないことを繰り返し経験し、失敗に焦点を当てがちです。ですから小さな成功経験でも状況変化を起こすきっかけになりますし、それを積み重ねて、最終的に継続的でより良い状況変化につながるように試みます。「今、この場でできることからやっていこう」というアプローチなのです。(その3に続く)※毎週木曜日夜に投稿です(^^)

2016年5月12日
西尾です。木曜日が来るのが早い(^^;
CAMRは状況変化のアプローチ!(その3)
 日々患者さんの状況変化を起こすためには、様々な視点と多彩な技術を身につけておくことが必要です。まず心身が環境との間にどのような問題を繰り返し起こしているかを理解するための「状況評価」の技術。心と体の準備状態を作るコンプリメントやプラシーボ利用などの「足場作り」の技術。すぐに変化を生み出せる様々な「徒手療法」や「運動余力を高める課題設定技術」。適切な「教育指導」や「環境調整のための知識や工夫」(生態学的アプローチ)などの総合的な力を要求されます。それらがあってこそ、その時その場で何とか状況変化を起こすためのリソース(資源)やきっかけに気がつき、利用できるようになるのです。とは言っても一つ一つの技術は決して難しいものではありません。次回からこれらの技術を具体的に説明していきましょう。(その4に続く)※毎週木曜日夜に投稿です(^^)


2016年5月19日
西尾です。お疲れ様です(^^)
CAMRは状況変化のアプローチ!(その4「状況評価その1」)
 「状況評価」は、心身と環境の間にどのような問題が繰り返し起こるか、どのような関係を築いているかを理解するための方法です。繰り返し起きる問題というのは、多くの場合、「悪循環」の関係を築いているものです。どのような悪循環があるかを理解すれば、その悪循環を壊すアプローチも自然に見えてきます。たとえば腰痛があると動かなくなり、それによって体幹の柔軟性がますます低下します。つまり「痛み→安静→体幹の柔軟性低下→さらに痛みが起きやすくなる→さらに安静・・・」という悪循環を描くわけです。
 脳卒中で身体が硬くなる時は、安静や運動量低下がきっかけとなります。つまり「安静→硬くなる→動きにくい→ますます動かなくなる→ますます硬くなる・・・」という悪循環です。(その5に続く)※毎週木曜日夜に投稿です(^^)

2016年5月26日
西尾です。蒸し暑い1日でした!
CAMR(カムル)は状況変化のアプローチ!(その5「状況評価その2」)
 「問題発生図」は問題発生の状況を視覚化する技術です。最初は紙と鉛筆で循環図を書いていきますが、慣れてくると頭の中でも循環図を描けるようになります。問題を見ると「何がどのように起きているか?」を調べ、出来事を矢印で結んでいきます。実際にやってみると実にシンプルです(^^)
 CAMRでは問題発生図を基に、アプローチの方針を決定します。腰痛で「痛み→安静→体幹の柔軟性低下→痛みが起きやすくなる→さらに安静・・・」という悪循環を断ち切るためには、「①徒手療法で痛みを軽くする②体幹の柔軟性を改善する③運動をすることの意味についての説明④痛みのない運動の価値の説明⑤痛みのない運動を見つけて繰り返し、多彩にしていく」わけです。(その6に続く)※毎週木曜日夜に投稿です(^^)


2016年6月2日
西尾です。夕方になるとビールが飲みたくなる今日この頃です(^^)
CAMRは状況変化のアプローチ!(その6「足場作り」その1)
 「足場」は家を建てたり修理する時に回りに一時的に組み立てるものです。これによって作業は正確、安全、効率的に行うことができます。
 リハビリの訓練でも同じで、身体の痛みや柔軟性を改善し、これから行う訓練の意味や効果を知って頂くと心身の準備状態ができて、より効率的に訓練を実施することができます。この手続きをCAMRでは「足場作り」と呼んでいます。
 足場作りには、体の準備として各種徒手療法があります。痛みや柔軟性を改善して、続く様々な運動をより効果的に行うことができます。
 もう一つは心の準備状態を作る技術で、これから行う運動の意味や期待される効果を説明したり、褒めたり癒やしたり、プラシーボを利用してより学習効果を高めようというものです。(その7に続く)※毎週木曜日夜に投稿です(^^)


2016年6月9日
西尾です。野球の結果が気になります(^^;
CAMR(カムル)は状況変化のアプローチ!(その7「足場作り」その2)
 まず痛みを訴えている方には「徒手療法」を試してみましょう。これで痛みが改善しようものなら、セラピストの株も上がります(^^)もちろん上手くいかない場合もありますが、セラピストが痛みに焦点を当てて、そこにアプローチするのは治療的関係を良くするのに有効です。もしこの過程を省くと「痛いのに何もしてくれない」となりかねません。
 徒手療法は上手くいけばそれだけで問題解決に一歩近づきます。そこで多くのセラピストは徒手療法こそ痛みという問題の解決手段と考えがちです。何しろ根本的な解決に思えますし、ひたすら完全に痛みを取ることに奔走します。でも・・・・(その8に続く)※毎週木曜日夜に投稿です(^^)


2016年6月16日
西尾です。同じテーマで引っ張りすぎでしょうか^^;
CAMR(カムル)は状況変化のアプローチ!(その8「足場作り」その3)
 でも多くの痛みは繰り返し現れたりします。「治った!」というのが一時的な改善に過ぎないことはよくあります。また痛みが人生の避難所?になっている方もいます。痛みにもその人なりの意味や価値があるのです。
 という訳で「完全に痛みを治す」ことのみに焦点を当ててしまうと、セラピストは「痛みを訴えられる→治せない→自分はまだ未熟だからと自分自身を責め→相手から更に痛いと責められると→相手の心理的な問題だから仕方ないと相手を暗に責める」などと自分を責めたり、相手を責めたりの悪循環に入ったりする場合もあります。(その9に続く)※毎週木曜日夜に投稿です(^^)


2016年6月23日
西尾です。もうじき終わります^^;
CAMR(カムル)は状況変化のアプローチ!(その9「足場作り」その4)
 CAMRでは、徒手療法は問題解決の手段ではなく、状況変化の一技法と考えています。だから徒手療法は「足場作り」という心身の準備状態を作るための一技法と考えているのです。解決困難な原因を切り離し、状況変化を起こすための技法です。
 もちろん徒手療法ですべての問題が解決するケースもありえますので、それはそれで結構なことです。ただそれはたくさんある状況変化の一つの可能性です。すべてのケースでそれを目指すとセラピストも患者さんも悪循環や停滞につかまってしまいます。
 まあ「状況評価」から「足場作り」へと状況変化を積み重ねているのです。更にこのすぐ後に「運動余力の改善」や「生態学的視点のアプローチ」などの状況変化の技法を重ねていくのです。CAMRではより良く安定した状況変化が起こればそれで良いと考えているのです。


2016年6月30日
西尾です。最終回です。全体として見ると、あまりまとまりがなかったですね、反省しています(ーー;)
CAMR(カムル)は状況変化のアプローチ!(その10)
CAMRは治療をどのように進めるかという治療方略を生み出すための手引きです。ちょうど孫氏の兵法書のようなものです。孫氏の兵法はシンプルな考え方の基準や原則が書いてあるだけです。シンプルで一般的だからこそ様々な分野、状況で応用が利くのです。
CAMRも同様に、シンプルな考え方のルールが決まっているだけです。そのルールに従っていけば、個別の問題に応じて様々な解決手段を生み出すことができます。(色々あって2週間投稿を休みます(^^))