原因を探すべきか、探さざるべきか・・・(西尾幸敏)2016年8月11日-2016年8月25日

2016年8月11日
原因を探すべきか、探さざるべきか・・・(その1)
1ヶ月間のご無沙汰でした。西尾です。新シリーズです。

 膝の痛みがあると、「歳とともに関節軟骨がすり減ってしまうため」と説明されたりします。「膝の痛み」という問題があって、その原因が「関節軟骨の減少」です。これが原因と仮定されるから、「軟骨成分の○○を摂取しましょう!」というアプローチが出てくるのです。テレビCMでお馴染みですよね(^^)
 これは因果関係を基にしたアプローチで、私たちが学校で習うアプローチの大枠になっていますよね。
 もし原因が「膝回りの筋力低下で膝関節が不安定になっている」と仮定すると、膝回りの筋力強化というアプローチになります。「膝関節内の骨運動が上手くいっていない」と仮定するなら「モビライゼーション」。「関節周囲筋や靱帯の短縮や癒着があるために、関節内の正常な動きが阻害される」と仮定するなら、周囲筋のストレッチやマッサージも考えられます・・・・実はちょっと考えるだけですぐに十以上の異なった原因を思いつきます。
 同じ膝の痛みの問題でも、何を原因とするかによって異なったアプローチが十以上も出てくるのです。実に面白い!(続く)


2016年8月25日
原因を探すべきか、探さざるべきか・・・(その2)
西尾です。時間が淡々と過ぎていきます。
 前回は膝の痛みの原因はざっと挙げても10以上あると述べました。「正しい因果の関係を調べて正しいアプローチを選択しよう」というのが一般的な意見だと思います。でも実際にはこれは困難ですよね。
 「一つ一つ順番に試してみれば良い」という意見もあると思います。それでも難しい。その場で試せる要素もありますが、時間をかけないとなんとも言えないものがあります。仮にモビライゼーションで痛みが改善します。「ほーら、これは関節内運動の減少が原因だったんだ!」と言えるかもしれませんが、しばらくするとまた痛みが再発することも多い。そうすると関節内運動を減少させる何か他の要因が働いていると考えられます。
 そもそもそれぞれの原因と呼んでいるものが独立しているとは考えにくいのです。関節内運動の減少によって荷重時に膝に痛みが出ます。身体はなるべくその膝への荷重時間を少なくしようとするでしょう。これを不使用スキルと呼びます。
 そうすると歩行時の全身の筋活動は常に特定化・定型化され、全身アライメントも歪んできますし、全体のあるいは特定の部分の運動量も減ってくるでしょう。軟部組織の短縮も周囲筋の弱化も起こりうるのです。そしてその逆も然りなのです。実に面白い!(^^;※来月からは秋山さんのOT学会レポートです。またしばらく投稿を休みます(^^;