徒手療法を巡るあれこれ(西尾幸敏)2016年9月4日-2016年9月25日

2016年9月4日
西尾です。今月は秋の強化月間として(^^;「OT学会シリーズ」(毎週木曜日)と「徒手療法を巡るあれこれ」(毎週日曜日夜)の二本立てです。
徒手療法をめぐるあれこれ その1
 僕が学生の頃には、なんとなく「徒手療法はマッサージ士の行うもの。セラピストは運動療法をするべし!」なんていう空気がありました。「徒手療法は古い経験的な技術で、運動療法は科学的根拠のある新しい技術」なんて感じでしょうか。
 そして未だに日本では徒手療法は、多くのセラピストから敬遠されている感じです。 実際僕の回りのセラピスト達の多くは徒手療法に批判的だったり無関心だったりします。「徒手療法は身体しか見ていない」「一時的な効果しか生み出さない」などです。でも身体しか見ていないのは徒手療法ではなく、それを使っているセラピストに問題があるのです。
 そして「一時的な効果だけでも生み出せる」なら素晴らしいことです。なぜなら一時的にでも「セラピストは状況を変化させることができる」とクライエントにわかってもらえるし、それによって良好な治療関係を築くきっかけになるからです。
 普通、クライエントの痛みの訴えを無視して良好な治療関係は作りにくいからです。(「その2」に続く)


2016年9月11日
西尾です。カープが優勝して、最高でーす!
徒手療法を巡るあれこれ その2
 現在、上田法の講習会がドイツで毎年定期的に開かれています(ニュルンベルクとブレーメン)。僕も5年前からの2年間、2都市で計4回の講習会で講義をしました。 ドイツは徒手療法大国です。PTの90%以上がマニュアル・セラピーの資格認定を受けています。マニュアル・セラピーの団体も政府公認のものが何十とあります。彼らはマニュアル・セラピーだけでなく、他の様々な徒手療法の認定をいくつも受けています。徒手療法の利点を肌で感じてよく知っていますし、だからこそ新しい徒手療法にも興味があるのです。
 上田法はこの5年で、講習会の応募に辞退者待ちが出るほど人気が出ています。そして上田法の講習会にはPTだけでなくOTの参加者も常に一定数います。
 どうしてそんなに徒手療法習得に熱心なのかをドイツの参加者に聞いたところ、不思議な顔をされます。「当たり前じゃないか!徒手療法はセラピストにとって基本となる有効な治療技術の一つだろう。日本でも上田法が生まれているくらいだからそうなのだろう?」(その3に続く)


2016年9月18日
西尾です。夕方5時からテレビでカーブ観戦。でも負けちゃった^^;
徒手療法を巡るあれこれ その3
僕「そう、日本では違うのです」
ドイツ人セラピスト「日本では患者が痛みを訴えたらどうするのか?」
僕「物療や痛み止め。あるいは無視して運動療法とか」ドイツ人セラピスト「それはひどい!徒手療法は少しの努力で誰でも習得できる。どうして学ばないのか?」
 そう、徒手療法はその時、その場で患者さんの状況を変化させます。それは僕たちセラピストにとってはとても便利で重要なものです。
 たとえば肩の痛みを訴える患者さんの痛みをその場で改善します。そうするとたくさんの状況変化が起きてきます。「スゴイ!この痛いのを直してくれたのは先生が初めて!」となれば一瞬で強い信頼関係が築かれます。新しい運動課題への導入も簡単になります。
 また痛みの原因がはっきりせず、漠然と不安と共に過ごしている患者さん。「原因不明の痛み」は大きなストレスですが、もしこの痛みが徒手療法によって一時的にでも変化すれば、「ああ、この痛みは変化する痛みなのだ!」と痛みの不安の循環から解放された気分になるかもしれません。(その4に続く)※MTFT講習会のお知らせ(以下のHPの新着情報へ) http://www.ne.jp/asahi/contextual-approach/workshop/


2016年9月25日
西尾です。クライマックスシリーズのチケットが手に入らなかった・・^^;
徒手療法を巡るあれこれ その4 
 日本では「ある特定の徒手療法をしています。」というとやや奇異の目で見られます。
 確かに実際に徒手療法を行っているセラピストの一部は、盲信的です。どんな疾患・障害の方にも「その特定の徒手療法」を行っている場合があります。 これはプロとしてあまりにも「安易な生き方」なのでしょう。それだけやっていればリハビリの仕事は何とかなると思っているようです。
 逆に徒手療法の習得に尻込みしているセラピストも同じだと思います。特定の徒手療法に限らずたくさんの技術を習得し、それらを活かす治療方略を発展させて初めて色々な運動問題に対処できるのです。(終わり)
※MTFT講習会のお知らせ(以下のHPの新着情報へ) http://www.ne.jp/asahi/contextual-approach/workshop/