CAMRとは何か?(2015年版)(西尾幸敏)2015年6月26日-2015年7月9日

 

 

 

CAMRとは何か?(2015年版)

 西尾です。CAMR関係のいろいろなイベントも終わり、またいつもの徒然なるままにそこはかとなく書いていこうと思います(^^;
が、今回は先のOT学会でのハンドアウトでお配りした文章をそのままのっけます(^^)

CAMRとは何か?(その1) 2015/6/26
老健施設 葵の園・広島空港 理学療法士 西尾幸敏
 医療的リハビリテーションのための状況的アプローチ(Contextual approach for medical rehabilitation: 以下頭文字を取ってCAMRと略す)はシステム論を中心に組み立てられた日本生まれのリハビリテーション・アプローチです。
 システム論を基にしていますので、「原因追及によらない問題解決」という特徴を持っています。また他にシステム論の視点から見た人の運動システムの作動特性を基にアプローチを組み立てています。
 たとえばシステム論で見ると、人は生まれながらの「自律的な運動課題達成者あるいは運動問題解決者」です。脳の病障害後には麻痺が現れます。しかし半身が麻痺したままでは動くこともできません。そこで患者様は残ったメカニズムを動員して、体を硬くしていきます。硬くすると一つの塊として健側半身での操作が容易になります。(CAMRではこれを外骨格系スキルと呼んでいます)
 人は病障害によって生じる運動問題に対して様々な解決手段を自律的に見つけ出し、それを実行していくのです。つまり僕たちが見ている障害というのは、病障害による直接の症状とそれに対する患者様の解決手段の入り混じった状態を見ているのです。
(その2に続く)


CAMRとは何か?(その2) 2015/7/9
 分回し歩行や尖足歩行にしても、脳性の病傷害後の麻痺に対する患者の取った解決方法であると言えます。整形疾患でも、痛みによる不使用スキル、支持性低下による骨靱帯性スキルなどが見られます。
 さて病障害の直接の症状は、リハビリでは改善できないこともしばしばあります。実際、麻痺や高次脳機能障害の直接の問題はリハビリでは解決できないかもしれません。しかしそれに対する患者様の選択した解決手段はまだまだ改善させうるのです。
 というのも病障害直後に患者様の選択した解決手段は、できるだけ早く課題達成しようとするあまり、手っ取り早く手をつけることのできる手軽な手段だったかもしれないのです。そして一度でも上手くいったためにそれがひたすら繰り返されているだけかもしれないのです。
 急性期であれば、もしセラピストが上手く導けば、患者様は様々な隠れた運動余力を発見し、あるいは利用可能な運動リソースをたくさん試すことができます。そしてその後であれば患者様はもっとたくさんの選択肢の中からより優れた解決方法を選ぶことができます。
 回復期・慢性期、患者様は急性期に飛びついた安易な解決手段をひたすら繰り返すために、実は隠れた運動余力に気づかれないまま停滞や悪循環の状態に陥っておられるかもしれません。セラピストはそのような停滞や悪循環の状態を壊して、新たな良循環の状態へ導くことができるかもしれません(おわり)文責:西尾幸敏