「あなたはどっち派?」シリーズ


これは全6回で終わったシリーズです^^;イラストのネタがなくて、パンダのジャンジャンが登場します^^;


 

2018年7月4日
あなたはどっち派?(その1)
 リハビリの現場で患者さんの運動問題を解決するとき、ほとんどのセラピストは次の二つに分かれます。
原因解決派と状況変化派です。
 原因解決派は要素毎の振る舞いを調べ、原因となる要素の振る舞いを変化させようとします。たとえば膝の痛みの原因を探ると周辺の筋に硬くなった部分があります。これが関節の痛みを生み出している原因と考えて、徒手療法でこの硬くなった部分を柔らかくしようとします。
 一方、状況変化派は・・・・・・(その2に続く)



 

2018年7月21日
あなたはどっち派?(その2)
 一方、状況変化派は痛みを持った人が最近動かないでテレビばかり見ているという状況に注目します。そして次のように話しかけます。「実はこの痛みは運動しないことが原因なのです。そのために膝回りの筋力が弱って、膝関節の動きが不安定になっているのです。だから筋力強化をしましょう。痛みの起きない立位課題がありますのでこれを繰り返していくと痛みが治ります!」こうして痛みの起きない運動課題を繰り返します。
 これは「原因説明からの実りある繰り返し課題」の治療方略と呼ばれます。
 実際、どちらのやり方でも痛みは改善するのですが、あなたはどっち派?(その3に続く)



 

2018年7月26日
あなたはどっち派?(番外編)
 前回の投稿に対して以下のような質問(意見?)をいただきました。

「『説明の中で筋力低下が痛みの原因だから、筋力強化をしましょう』と言っているのだから、筋力低下を原因としてアプローチしているのではないか?これでは原因解決型のアプローチとかわらないではないか?」
なるほど!まったくその通りですよね!
 でも状況変化型のアプローチでは「問題の原因はどうでもよいと考える」あるいは「問題の原因という概念自体がない」のです。
 CAMRではシステム論を基にしているので「問題は様々な要素の相互作用から生まれる」と考えるので、単一の要素の振る舞いが全体の問題の原因になっているはずがないと考えます。「問題の発生に影響する要素の一つかも知れない」と考えますし「この要素を変化させれば全体の振る舞いを一時的に改善させることができるかも知れない」とも考えます。
 実際軽い痛みなら筋トレだけして解決することもあるとは思いますが、普通は筋トレだけではなく様々な要素に同時に働きかけていく方が良いだろうと考えます。だから筋トレだけをしようとしているのではないのです。

 ではなぜこのような説明をするかというと、因果の関係で説明して患者さんを説得し、「動かないでテレビばかり見ている状況を変化させよう」と考えるからです。
 原因を明確に説明し、その原因は解決可能であること。解決の手段は日々の生活の中で、比較的短時間、痛みのない運動を繰り返すだけですよと説明することによって、患者さんの中の不安を解消し、問題解決に取り組む姿勢を作り出すことが目的です。
 ですから「実は動かないことによって、体中の筋膜(筋肉)が短くなったりくっついたりして硬くなっているために起こる痛みです。だから痛みの起きない程度のストレッチと簡単な運動をしましょう。それを繰り返せばこの痛みは治りますよ」と説明してもよいのです。
 やることはどちらも一緒で「実りある繰り返し課題」(座位や立位で行う軽いトレーニングやストレッチを含むメニュー群)を行います。これらには筋トレ・筋の活性化だけでなく全身のストレッチや痛みなく荷重し、重心移動するためのスキル練習の目的もあります。「実りある繰り返し課題」のメニューをこなすと自然に多要素、多部位に同時に働きかけることができるのです。
 セラピストにとって説明しやすいもの、あるいは患者さんに取って理解しやすいものを選べば良いのです。

 痛みという問題を一番解決したいのは患者さんです。だから問題を解決する努力は患者さんが一番されるはずです。でも努力の仕方がわからないので、セラピストに頼ろうとします。自らの努力は「ひたすらセラピストに頼る」などということになるのです。だからCAMRは患者さん自身の問題解決のための努力の道筋を示しているのです。
 「自分でこう努力すると、自ら問題解決を図ることができる」という経験はとても大きな喜びを生みます。「全てがセラピスト任せ」では自立心も自信も持てませんよね。セラピストに頼り切った患者さんを作り出すだけです。

 もちろんセラピストが、最初に徒手療法で痛みを一時的にでも改善してあげると、患者さんの内部ではとても信頼できるセラピスト像ができあがります。「わっ、この先生すげえ。すぐに痛みを治してくれた!」そうすると先ほどの説明は更に説得力を持つことになります。徒手療法を手始めにすることはとても価値があるのです。
 これらは状況変化のための「足場作り」の技術と言います。「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」(金原出版)でもこれを説明しています。

 

2018年8月2日
あなたはどっち派?(その3)
 CAMRは基本、「その時、その場でできる状況変化の手法や訓練は全て実施しよう」という治療原理を持っています。
 というのも徒手療法で硬いところを改善するとその場で痛みは改善します。しかしその効果は一時的でしばらくすると消えてしまいます。即効性はあるけれど長続きしない効果なのです。
 一方、「痛みの起きない運動課題を繰り返す」では、その場ですぐに効果が見られません。しかし長期的には大きな状況変化を起こす手法です。即効性はないけれど長続きする効果を得られます。
 ですからCAMRではその時、その場でできる手法や試みはできるだけ同時にやっていこうとします。「徒手療法」と「原因の説明からの実りある繰り返し課題」のどちらも行うと効果は即効性があり長続きする効果を生み出します。これは「多要素・多部位同時アプローチ」と呼ばれます。(その4に続く)