ちゃっかり後輩ミナとちょっと心配性の先輩ユリコのダブルバインドこぼれ話(秋山真理子)2017年3月8日-2017年3月17日

2017年3月8日
秋山です。ダブルバインドのスピンオフです。
ちゃっかり後輩ミナとちょっと心配性の先輩ユリコのダブルバインドこぼれ話
その1 “指摘”はNG?

パートおじさん休之介と悩める3年目一郎がスタッフルームを出た後、何やら2つの人影が・・・。一郎の同期PTミナと10年目OTユリコであった。

ミナ「いやー、濃い話でしたねー。珍しく一郎君、熱血でしたね。」
ユリコ「食い下がってたね。出るに出られん。でも、勉強になったわ。」
ミナ「ダブルバインドって、私、初めて聞きました。有名なんですか?」
ユリコ「精神科や心理学で習ったなぁ。いろんな治療理論の基礎になってるね。『矛盾する2つの命令』ぐらいしか覚えてなかったけど、ダブルバインドとなる2つの条件はよくわかったわ。」
ミナ「しかし、ダブルバインド恐るべし、ですね。良かれと思った指導が悪循環を招く・・・。私、来週から評価実習の学生さんのを指導担当なんですけど、今のを聞いてたら、何を言ったらいいのか不安になりました。」
ユリコ「うん、ダブルバインド理論は、どの立場で聞くかによって効用は変わってくるかも。弱い立場の修君はこれを知ることで、すぐに解決しないとしても少しは心に余裕が生まれるだろうね。休之介さんの狙いよね。逆に意図せず“強い立場”に置かれてしまう人は、自分がやらかさないか心配になるよね。でも、指摘そのものが悪いわけではないと思うの。」
ミナ「え?」    (その2に続く)


2017年3月11日
ちゃっかり後輩ミナとちょっと心配性の先輩ユリコのダブルバインドこぼれ話
その2 指摘そのものが悪いのではない
 
ミナ「でも、指摘され続けたら私だって凹みますよぉ。」
ユリコ「え、そうなん?そうは見えな・・・、いやいや。まあ、“指摘”という言葉自体が“叱る”を連想させて良いイメージではないかもしれないけど、伝えることを否定しているのではないの。逃げられない状況で、強く非難され続けていると相手が感じてしまうことが問題なの。話に出てた“自動化”のように、状況に関係なくきつい指導をただ繰り返すとかね。」
ミナ「相手が気づくのをじっと待つんですか?」
ユリコ「うーん、待って意味のある時と無為に時だけ過ぎることもあるからね。気づけるようにお膳立てする、ってとこかな。学生にとってちょっと挑戦的で達成可能な課題を設定できるといいよね。こちらがあまりに何も言わないのも、学生がどうして良いかわからない状態を作ってしまう危険があると思うの。」
ミナ「常に顔色うかがっちゃいますね。“無言の圧力”と思っちゃうかも。私なら『ラッキー、てきとーにやっとこー』ですけど。あ、急がないと女子会始まっちゃいますよ。今日は焼肉!」
ユリコ「おいおい、来週の実習指導、大丈夫なの?まぁ、起きていない問題を心配してもしょうがないか。あなたの、その“何とかなるさ力”を修君に分けてあげたいよ。」
(その3に続く~)


2017年3月14日
ちゃっかり後輩ミナとちょっと心配性の先輩ユリコのダブルバインドこぼれ話
その3 そんなに大介が悪いのか?

さて、焼き肉屋へ急ぐ道々、二人の話は続く。

ミナ「休之介さんの話を聞いてなるほどと納得した反面、大介先輩がかわいそうな気もするんです。原因にされた上に『あいつには言っても無駄、ほっとく』みたいで、冷たいというか・・・。」

ユリコ「あー、そうね、仲間なのにって感じかな。休之介さんも『怖いから、僕は知―らない』的なこと言ってたしね。でも、あれは本心ではないと思うよ。怖いからつつかないのではなくて、変わりやすいところから取りかかろうということだと思うの。」

ミナ「大介先輩の方が間違ってるって修君に言うことがですか?」

ユリコ「ちょっと誤解があるようね。休之介さんがやろうとしているCAMRによる解決は、悪循環に陥っているときに原因を探り出すのではなく循環を小さく断ち切る、って習ったよね。誰の問題かも重要よね。一郎君ができることとなると、大介さんに対しては難しい。これが大介さんが少し迷った時に主任が関わるとかなると、やることは違うかも知れない。根本的解決というとかっこいいけど、何が根本かなんて複雑な人間関係の中では確定できない。だから変えられそうなところを変えて、状況がどう変化するか見ていくの。
もう一つ大事なのは、誰が正しいか、間違っているかとか善悪とかいう価値と、システムが上手く回るかどうかは別物ということ。」

ミナ「え?」 (次回は最終回、金曜投稿の予定です)


2017年3月17日
ちゃっかり後輩ミナとちょっと心配性の先輩ユリコのダブルバインドこぼれ話
その4 最終回(^_^)

ユリコ「正しいかどうかなんて立場や状況次第だし、議論しても果てしないよね。だからそれは横に置いといて、システムが上手く回っているかに着目するの。
それぞれの言い分をどっちが正しいかジャッジするのではなく、修君が実習生として上手く振る舞うために、何なら変えられそうかを探すの。」
ミナ「修君の代わりに大介先輩を責めるわけではないんですね。」
ユリコ「悪者を探し出して更生させることでシステムが上手く回るのならいいけど、職場の問題には良い手ではないわね。
大介さんは良い人で、彼が関わって上手く回っているところもたくさんあるので、1つの不具合でそれがチャラになるものでない。
かといって、一生懸命やっている事だからと、修君のことに目をつむるわけにもいかない。善悪で判断するとこうなっちゃうよね。」
ミナ「一瞬、休之介さんって、なんて奴!って思っちゃいました。」
ユリコ「休之介さんも、一郎君にわかりやすく説明するために言ったんだと思う・・・あ、いや、もしかしたら本気で?
ううん、そんなことない、はず・・・。一郎君にフォロー入れた方がいいのかな・・・」
ミナ「もー、いーじゃないですか!同期のエース一郎が上手くやりますって!あ、間に合いましたよ。ここのホルモン、最高ですよ。さあさあ」
ユリコ「私にも、その“何とかなるさ力”を分けてちょうだい!」
終わり  お付き合いありがとうございました。