「運動余力とは何か?」シリーズ


これは全6回で終わったシリーズです^^;イラストのネタがなくて、パンダのジャンジャンが登場します^^;


 

2017年12月28日
運動余力とは何か?(その1)
 身体能力とは筋力、筋持久力、瞬発力、心肺持久力、敏捷性、平衡性、柔軟性などの様々な運動の基礎となる能力です。
 一方「運動余力」とは日常生活課題や動作を実用的に達成する能力のことです。80歳で元気なおじいちゃんとオリンピック級のアスリートでは「身体能力」には雲泥の差があります。でも課題との関係で見ると、たとえば両者とも自宅のトイレで実用的に用を足すのであれば「運動余力」に大きな差はないと言えます。
 医療的リハビリテーションではこの「運動余力」という概念がとても大事になります。私たちの仕事はこの日常生活課題の実用的達成能力を見る仕事だからです。今シリーズでは運動余力を中心にセラピストの仕事を考えてみます。(その2に続く)
※CAMRのベーシック講習会Ⅰがあります。具体的な話をします。
2018年1月21日(日曜日)9時30分~13時20分(受付9時から)東広島芸術文化ホール くらら 研修室5 



 

2018年1月5日
運動余力とは何か?(その2)
 運動余力は運動リソースと運動スキルからなります。
 運動リソースは課題達成のために利用される資源のことで、身体そのものや身体の備える性質(筋力、筋持久力、瞬発力、柔軟性など)である身体リソースと身体以外の環境内にある様々なもののことです。
 運動スキルとは課題達成のための運動リソースの利用の仕方のことです。
 当然ながら健常な人は運動リソースが豊富で運動スキルが多彩なので、様々な状況で様々な生活課題を実用的に達成することができます。健康な若者なら運動余力が豊富なので、少しくらいの山道や石段も実用的に移動できます。
 身体障がいを持つとまず身体リソースが貧弱になります。身体を動かすことが不自由になるので、課題達成のためには手すりなどの環境リソースが必要になったりするわけです。
※CAMRのベーシック講習会Ⅰがあります。具体的な話をします。
2018年1月21日(日曜日)9時30分~13時20分(受付9時から)東広島芸術文化ホール くらら 研修室5



 

2018年1月12日
運動余力とは何か?(その3)
 「運動スキル」とは課題達成のための運動リソースの利用方法です
 人の運動システムは、課題達成のために様々なリソースの使い方を試し、学んでいきます。
 たとえば杖は、使い方を知らなければただの棒きれに過ぎません。でも荷重の一部を手で受けて支持やバランスを維持する方法を試し、学習することによって歩行補助具として使えるようになります。
 そして異なった状況の中で様々に使い方を試すことで、色々な状況の中でも適応的に杖を使えるようになります!これが運動スキル学習です!
※「PT・OTが現場ですぐにつかえる リハビリのコミュ力」(西尾幸敏著 金原出版)にも説明してあります。


 

2018年1月18日
運動余力とは何か?(その4)
 運動余力というアイデアはCAMRではとても大事です。運動余力なら工夫次第で誰でも、その時、その場で一瞬に変化させることができます。   
 たとえば廃用で立つことはなんとか可能だけど、歩こうとすると転けそうで歩けない方がいます。当然身体能力を改善すれば良いのですけどそれには時間がかかります。そこでその場にあるパイプ椅子のような環境リソースを利用し、その背もたれを持って押すことで「安全に移動する」という課題をその場で達成できます。
 運動余力は運動リソースと運動スキルの相互作用によって決まってくるので、工夫次第で色々な可能性があるのです。
※「PT・OTが現場ですぐにつかえる リハビリのコミュ力」(西尾幸敏著 金原出版)にも説明してあります。アマゾンで。


 

 

2018/1/15

運動余力とは何か?(その5)
 学校で習う問題解決では身体リソース、つまり身体能力、筋力や柔軟性ばかりに目が行ってしまいます。
 でも運動余力の視点だと環境リソースも身体リソースと最初から同様に重要です。環境リソースは身体リソースと同様に最初から焦点が当たっていて、その利用方法を身体リソースとの関係の中で考えていくことができます。
 更に運動リソースの使い方、つまり運動スキルの視点から運動余力を改善することもできます。
つまり、運動問題解決を図る上で身体リソース、環境リソース、運動スキルの3つの視点からアプローチできます。つまり選択肢が増えることになるのです。
※「PT・OTが現場ですぐにつかえる リハビリのコミュ力」(西尾幸敏著 金原出版)にも説明してあります。アマゾンで。

 

2018/2/1

運動余力とは何か?(その6)
 運動余力の視点はベテランの臨床家が無意識に身につけている解決手法の視点に近いかも知れません。多くの臨床家は経験やセンスによって、それらの視点を身につけているものです。ただ言語化されたり知識が体系化されたりすることがないため、人に伝えたりすることが難しいのです。結局個人的財産として埋もれてしまっています。とても惜しいことです。
 CAMRではシステム論の視点から、「運動余力」というアイデアを言語化し知識の体系化を図っています。経験の少ない新人さんでもすぐに問題解決の幅を広げることができるようになります。(終わり)
※「PT・OTが現場ですぐにつかえる リハビリのコミュ力」(西尾幸敏著 金原出版)にも説明してあります。アマゾンで。