これも全4回で終わったシリーズです^^;
2017年12月1日
訓練の効果が停滞しているとき その1
セラピストが「あれ、この人はもっと良くなるはずなのに」と思う患者さんがいます。そうするとセラピストは「もっと良くなるための訓練」を行うことになります。しかしそれでも変化は起こりません。このように訓練を行っても長期的に状況が変化しないのを「停滞」と呼びます。
もちろん日々の訓練では少しの変化が見られます。一時的ですぐに消えてしまう変化。これを「揺らぎ」と呼びます。「停滞」は日々揺らぎを繰り返しては長期的にはほとんど変化しない状態が続くことです。
停滞の原因は様々です。多くの場合は、行っている訓練が状況の変化を起こしえない内容だからです。
これは室内に置いた風鈴の短冊を口で吹いて鳴らすようなものです。吹いている間は鳴りますが、吹くのをやめると短冊は元の位置に戻って風鈴を鳴らすのをやめてしまいます。さて、どうするか?(その2に続く)
※CAMRのベーシック講習会Ⅰがあります。2018年1月21日(日曜日)
9時30分~13時20分(受付9時から)東広島芸術文化ホール くらら 研修室5
詳しくはCAMR HP http://www.rehacamr.com/
2017年12月8日
訓練の効果が停滞しているとき その2
システム論の視点が面白いところは、「風鈴そのものが1つのシステムではない」と考えるところです。つまり風鈴は真空中にあるのではありません。部屋の中にぶら下げてあります。そうすると部屋と風鈴は、風鈴が作動する(鳴る)ための1つのシステムであると考えるのです。
そうすると3つの方向からアプローチを考えることができます。
1つは環境リソース(資源)を変えるアプローチです。
たとえば部屋の機能(空気の入れ換え)を促すためにドアや窓を開けると考えても良いですね。外からの風があれば風鈴はもっと鳴るでしょう。通風口を新たに作るという構造的な変化を起こすこともできます。扇風機のような新しいリソース(資源)を持ち込むこともできます。これらは風鈴の作動に継続的な変化を起こします。
人の運動システムで考えれば、人は環境の中にいます。だから人のいる環境もその人の運動システムだと考えることができます。(ややこしくなるので今は大雑把にこれだけを述べておきます)そして環境リソースは回りの人々や動物だったり、活動する場所、屋内や屋外の構造物だったりするのです。
たとえば回りの人々が接し方を変えるとその人の運動は変わってきます。手すりをつけたり、逆に段差をつけても運動は変化します。電動車椅子などの新たなリソースを導入してもそうです。
環境リソースの構造的・機能的変化は、人の運動システムに継続的な変化を起こす可能性があります。もちろん環境リソースを変化させただけではダメでそれに加えてもう少し工夫が必要なのですが・・・(抽象的な話ばかりで申し訳ない。その3に続く)
※CAMRのベーシック講習会Ⅰがあります。具体的な話をします。
2018年1月21日(日曜日)9時30分~13時20分(受付9時から)東広島芸術文化ホール くらら 研修室5 詳しくはCAMR HP http://www.rehacamr.com/
2017年12月15日
訓練の効果が停滞しているとき その3
二つ目のアプローチの方向性は風鈴そのもののリソースを変えることです。たとえば風鈴の短冊をもっと軽い材質で大きく変えて見ることができます。短冊を吊す糸の長さも変えられます。少しの風でも揺れて鳴るようになるかも知れません。
人の身体で言うと身体のリソース(筋力や柔軟性、全身体力など)を変化させることです。
学校で習う考え方では、弱ったところ、低下したところのリソースや部位に焦点を当てて改善しますよね。だから四頭筋が弱いから椅子に座って特に四頭筋を鍛えたりします。
でも実際の動作の中では、人の身体は部分だけで働くことはなく常に全体が一つに繋がって働きます。どんな課題も常に全身の繋がりで達成することを考えると、身体リソースを改善するためにどのような運動課題が良いかは自然に見えてきます。
※CAMRのベーシック講習会Ⅰがあります。具体的な話をします。
2018年1月21日(日曜日)9時30分~13時20分(受付9時から)東広島芸術文化ホール くらら 研修室5 詳しくはCAMR HP http://www.rehacamr.com/
2017年12月21日
訓練の効果が停滞しているとき その4
三つ目のアプローチの方向性は、運動スキルです。運動スキルとは人に取って必要な運動課題(移動する、食べ物を探す、危険を避けるなど)を達成するための環境リソースと身体リソースの利用の仕方です。
これは残念ながら風鈴では説明できませんね。風鈴は自らのリソースや他のリソースを利用することができないからです。知能のある動物だから持てる能力なのです。
様々な運動リソースを持ち込み、それらの利用の仕方を学習することで人の課題達成能力は格段にアップします。
普段の訓練で筋力や柔軟性を改善してもそれは運動能力の要素を改善しているだけです。訓練効果は運動能力の要素的アップを目指すだけでは効果はすぐに停滞してしまいます。課題達成能力(運動余力)のアップを目指すべきです。利用可能な運動リソースを豊富にし、その利用方法である運動スキルを多彩にするという視点が必要なのです。
これは状況変化を起こすためにセラピストが行うべき基本的な作業の1つなのです。(おわり)
※CAMRのベーシック講習会Ⅰがあります。具体的な話をします。
2018年1月21日(日曜日)9時30分~13時20分(受付9時から)東広島芸術文化ホール くらら 研修室5 詳しくはCAMR HP http://www.rehacamr.com/