2015年前半 単発で終わったシリーズ
病院のセラピストは定食の一品?(その1) 2015/3/17 不謹慎かも知れませんが、病院スタッフを「豚カツ定食」にたとえてみます。医師はもちろん豚カツです。いや、これはもう堂々たる豚カツであります。豚カツ定食を豚カツ定食たらしめる一番の存在です。看護はご飯にあたるでしょうか。リハビリは副菜にあたるでしょう。
もちろん定食ですから、全体のバランスが良い方がいい。一品一品がおいしく、それぞれの味をお互いに引き立てるなら最高の定食です。
さて食堂には単品のメニューも置いてあります。もしその一品目当てに人が集まるなら、その一品はたいしたものです。
病院ではリハビリは入院するとついてきたりします。「リハビリを受けること」が目的でも、その病院のそのリハビリ科を受けることが目的ではないかも知れません。定食を頼んだらついてきた副菜と同じです。豚カツやご飯の味を引き立てる副菜もあれば、賑やかしのために置かれたとしか思えない副菜もあります。
これは、先日、「解決志向ブリーフセラピー」の講習会に参加して思ったことです。心理療法士やカウンセラーの方達がたくさん受講していました。彼らは食堂で言う単品のメニューです。定食ではなく、単品メニューとして勝負します。
来られるお客さんも、回りからなんとなく勧められあるいは強いられてきている方が多い。「私には関係ない・・・」といった態度をとる方も多いとのこと。
だからこそ最初の出会いが大切です。回りに店がなく「仕方なく」入った食堂で、たまたま頼んだメニューが「オー、これはおいしい!」と思われて次からの来店を促さなくてはなりません。最初の一回の出会いを大切に、丁寧にセラピストとクライエントの関係の流れを作らなくてはなりません。それも短時間に。
僕も以前は○○医療センターや□□医療センターで何年も働いていました。これはその時の反省でもあります。定食の一品として良いパフォーマンスをしたか?時に定食の一品として仕方なく添えられていたのではないか?(その2に続く)
短期間で運動パフォーマンスを上げる治療方略があることをご存じでしょうか?訓練意欲の低いクライエントを前にしたときに、用いるべき技術があることをご存知でしょうか?興味がある方はCAMR講習会へ!
文責:西尾幸敏
人の運動システムは物理法則に従うシステムです(その1) 2015/5/13
人の運動システムは物理法則に従うシステムです。しかしこのことは一部のセラピストに誤解を生んでいます。たとえば人の運動システムをロボットのシステムのように考えてしまいます。どちらも確かに物理法則に従いますが、まるっきり異なったものです。
たとえばロボットは一つ一つの部品の動きはとても制限されます。一つの部品は一種類の運動(直線上の往復とか軸の回りの回旋)しかできません。このような運動は自由度1の運動と呼ばれます。ロボットの各部品はそれぞれ単純な動きをしていますし、その組み合わせで実現される運動もコントロールしやすいのです。こうして一見複雑な歩行の運動を実現しています。
逆に人の運動システムの部品、たとえば関節はほとんどのものが自由度2か3の関節になります。自由度2は水平面の動きになりますが、水平面上の一点は無限の軌道を描きます。一つの位置を特定するためには2つの変数が必要です。自由度3の関節ではさらに3つの変数が必要です。早い話、一つの動きを特定するためにはより複雑なコントロールが必要になるのです。
他にも筋肉は粘弾性があり、コントロールが難しい。また力を発生する横紋筋はベルンシュタイン曰く「じゃじゃ馬」のようにコントロールが難しい。さらに一つの自由度2や3の関節に複数の筋肉が3方向以上についていて、一つの肢位をとるにも無限の組み合わせがあります。実際に一つの肢位や姿勢は、異なった状況では異なったやり方で行われています。
つまり人の運動システムはとても複雑な作動をする部品をたくさん組み合わせて、一見単純な歩行という運動を実現しているのです。
人の運動システムをロボットのように考えて、「骨や筋肉の正確な位置関係から動きを予測できる」というのが実際には難しいことがおわかりでしょう。一つの運動はたくさんの異なったシステム作動で実現されるし、一つのシステム作動が異なったたくさんの運動を生み出しうるのです。
両者のシステムの違いは明白で、ロボットはごく限定的に想定された条件内でのみ歩行という運動を実現しています。逆に人の運動システムは同じような歩行パターンを繰り返しているように見えても、刻々と変化する状況に適応的な変化を生み出して歩行という機能を維持しています。さらに未知の想定外の状況にも新たな適応的な歩行パターンを生み出そうとするのです。
詳しくは上越講習会で!文責:西尾幸敏
CAMRでよくされる質問 「システム論は・・・・?」 2015/5/21
講習会や勉強会でよくされる質問の一つは「システム論は正しいのか?」というものです。システム論も還元論も世界を理解する時の立場というか視点です。世界を理解するための視点です。どちらが「正しい」とか「正しくない」とかはありません。
たとえば郵便小包の料金を決める時のことを考えてみましょう。まず重さという視点から料金をシンプルに決めることができます。しかし中には、軽くてもとてもかさばる荷物があります。こんなのばかりだと料金は安いのに、トラックの荷台はすぐに一杯になってしまいます。
また大きさという視点で料金を決めると、小さくてもとても重い荷物ばかりになることもあります。こんなのばかりだとトラックの荷台はまだ積めるのに重量超過になってしまいます。重さと大きさ、どちらかの視点で料金を決めてしまうと荷物の取り扱いや積み込みと料金との間に不具合が生じます。だから料金を決める時には重さと大きさという二つの視点を組み合わせて決めるわけです。
従来のように運動システムを目に見える構造で定義する視点(還元論)もあれば、システムの作動から定義する視点(システム論)もあります。どちらの視点にも長所・短所があります。上手く組み合わせるとお互いの不都合を補い合いながらアプローチを組み立てることができます。CAMRはそのような治療方略を提案しているのです。(西尾幸敏)
詳しくは上越講習会で!
徒手療法はどんな位置づけ? 2015/7/3
「支配される痛みから管理される痛み」への治療方略の中で
従来のリハビリテーションでは、痛みや柔軟性を改善する徒手療法は、「痛みや柔軟性低下などの問題を解決する技術、つまり問題解決の技術」という位置づけです。従来のリハビリテーションでは、問題の原因を身体に探り、その身体の原因にアプローチして解決を図ります。そして原因や解決を身体のみに求めるアプローチでは、「痛みはその時、その場で改善しておしまい」の治療方略が中心になりがちです。
一方CAMRでは、原因ではなく状況を変化させることによって問題解決を図ります。従ってCAMRでは徒手療法は「問題解決の技術ではなく、状況変化の技術」という位置づけになります。徒手療法が使えると、セラピストとクライエントとの「治療的状況の関係作り」にもとても有利ですし、その関係を基に「支配される痛みから管理される痛み」への治療方略が展開できるようになります。
さらに「痛みはセラピストによって管理される」から「できるならクライエント自身によって管理される」へと治療方略の展開を試みています。
CAMRでも、徒手療法はセラピストにとって非常に有効な武器になります。そこで・・・
このページでも前に紹介したドイツ政府公認のマニュアルセラピーの1つ、「統合マニュアルセラピー」の講習会をドイツ人のインストラクターを呼んで広島で開きたいのですが、会場探しに苦労しています。どなたか、場所を提供していただける、あるいは紹介していただけませんか?治療台が10台程度必要で、開催予定は12月19・20日(土日)です。
僕(西尾)もこの1月に名古屋でのこの講習会を受けていますが、とても実用的で分かりやすいです。お薦めです(^^)!